maimaiomaiのブログ

アイルランドと日本の狭間で 言葉を解き、紡ぎなおす者として

不便の裏側に

 

海外へ行くと大抵そうなのだが、アイルランドへ来ると、東京の便利さに甘やかされてきた自分にハッとさせられることが多い。

 

アイルランドではプラスチック袋税があるため、道端では、卵や牛乳を両手にかかえて颯爽と歩く人をよく見かける。

アイルランドは、世界で初めてこの「プラスチック袋」税を導入した国の一つであるのだそう。

最近はさらに、「使い捨て」のプラスチックの使用を禁止するのだとか。

 

プラスチック袋に入れてくれるだろうと普通に待っていると、レジのお姉さんが、何とも言えない軽蔑の眼差しでこちらを見てくる時があり、最初は「なんで私をそんな目で見るのかしら…」、と思うのだが、数秒してから「ハッ」として、慌てて自分のリュックに無理やり詰め込む。

 

 

 

それに、東京の交通手段は余りにも便利なものだから、気づかぬうちに「歩く」のを怠っていた。こちらへ来ると、自ずと歩く時間が長くなる。

 

ユニクロや百均のようなお店がないので、安くものを手に入れようとするならば、町中に点在する「チャリティー・ショップ」、いわゆる「セカンドハンド・ショップ」へ。

 

「寒い、寒い」と包まるこたつもないものだから、服を着こんで身体を動かし、あるいは、暖炉に泥炭を放り込む。

 

夏に水不足になれば、料理で使った水を溜めて、お庭のお花やお野菜に撒く。

 

医療制度も日本ほど整っていないため、自力で直そうという心意気が半端なく、ハーブなどの知識がすごい。これは見習いたいと心から思う。

 

そんなこんなで、眠りこけていた感覚がよみがえる。アイルランドに滞在している期間は、そのせいか、すこぶる体調がいい。

 

 

話は少し逸れるけれど、なんてたって、ダブリンの素晴らしいところは、その「コンパクト」さだ。

バスで20分ほど行けば、大自然の中へ。Howth という港町で降り、少し山を登れば、目の前には断崖の絶景が広がる。

 

 

半日もあれば十分に楽しめるので、私はよくここを訪れる。

 

ある日、Howthの断崖付近をハイキングしていると、快晴だったのに、急に雨に降られた。

雨に降られながら、トトロの映画のように折り畳み傘をさしながら相方とバス停で待っていると、隣に女性たちの集団がわらわらとやってきた。

 

すると何やら携帯を取り出して、調べ物をし始める。そして何か納得し、女性集団はそのままそそくさと去っていった。

 

 

 

「バス用のアプリがあるんだよね」

うちの相方さんがポロっと言った。なるほど。アプリでチェックして、バスがしばらく来ないことを確認して、歩くことにしたのか。

 

それでも私たちは、なぜかバスが来るような気がして(根拠ゼロ)、そのまま待つことにした。

すると、これまた急に雨が止み、太陽がチラリと顔を出す。(アイルランドの天気は変わりやすい)

 

「ああ、ほら」

 

 

と言う相方の視線の先を見ると、目の前に、見事な2重の虹が現れた。

きっと、アプリを入手し、「正しい」情報に従っていたら見られなかった虹である。

虹を見たのは何年ぶりだろう?本当に思い出せない。

東京にいる時の自分の、余裕のなさを思った。

 

 

 

やはりバスは来なかったが、虹を見たということで満足した私たちはそのまま歩き始めた。

 

便利とはなんだろう。一時的な「便利」で、自分の首を締めてはいないか。

そんなことを、こちらへ来ると思う。

不便や無駄の中に垣間見える虹があるとすれば、時に、不便を敢えて選ぶのも良いのかもしれない。

 

 

 

 

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