アイルランドが文学大国なのは、冬の闇が長いからなのではないかといつも思う。
闇は、筆を走らせる。
昨夜は、ダブリン市民にとって大変衝撃的な一日だった。闇が深まる頃になると、こういった事件が起きる頻度が高くなるように感じる。ダブリン市内では、バスやパトカーや路面電車が放火されたうえ、警察が暴行を受け、窃盗が多発。大変な騒ぎとなった。反移民を訴える極右の集団が突然暴れ出したのである。
私は、ワークイン・プログレスの発表のために、とある劇場に向かっていたのだが、バス停で永遠にバスを待ちながら、嫌な予感がした。
そもそもの発端は、街の中心で起きた切傷事件だった。「ほらみろ、移民を入れるから治安が悪くなったんだ」といわんばかりに、事件に便乗して暴動は起きた。しかし、その切傷事件現場を救ったのは、配達中のブラジル人の移民男性だった。
一方、ワークイン・プログレスの発表は、語り尽くせないほど有意義な時間だった。劇場の芸術監督の方も、スタッフの方も、同僚のアーティストたちも、「作品の仕上がりを心から楽しみにしている」と次々と声をかけてくださった。次のステップに向けて、素敵なアーティストたちや団体が賛同してくださった。人に声をかけるたびに、清水の舞台から飛び降りるような想いだったが、何かに取りつかれたように、どんどん飛び降りている自分がいた。
震えているばかりの自分に飽きてきたのかもしれない。震えに飽きるまで、とことん震えてみるのもいい。舞い上がることなく、落ち込むこともなく、粛々と進みたい。
昨夜、ダブリン市内は燃えるバスや路面電車で爛々と明るく照らされた。こちらでは、なにかにつけて、火が登場する。なんで、こんなにもアイルランドの若者は火を使いたがるのか、と時々疑問に思うのだが、私自身も、雨が降りしきる暗い冬に突入すると、火を灯したい強い衝動に駆られる。キャンドルを灯すでも、セージを燃やすでも、なんでもいいのだが、何かと火を欲する。闇や水気を吸い取ってくれているような錯覚に陥るのである。
何かと二分化が進んで、分断が目立つ。自分の掲げる正義は本当に正義なのか、いまいちど問い直したい。
私も含め、移民たちは、なんともやりきれない気分で夜を過ごした。移民たちが安全に過ごせる街に、はやく戻ってほしい。
Axis Ballymun / axis Assemble Artists
https://www.axisballymun.ie/assembleartists2023
Foundation Programme by Irish Writers Centre and Dublin Book Festival
https://irishwriterscentre.ie/announcing-the-2023-iwc-dbf-foundation-programme-participants/
Weft Studio by Dublin Fringe Festival
https://www.fringefest.com/news/announcing-weft-studio-artists-2023-2024
Eighth Annual Kyoto Writing Competition