maimaiomaiのブログ

アイルランドと日本の狭間で 言葉を解き、紡ぎなおす者として

アイルランドの神社

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イチイの木

約3年ぶりに髪を切った。

 

先日、鏡に映った自分がシャーマンにしか見えず、いたたまれなくなり、さっそく切ることにした。

 

3年間伸ばし続けたことに、あまり意味はない。特に切りたいと思わなかったし、伸ばしたいとも思わなかったので、伸ばし続けただけの話である。それに、異国の地で一からヘアサロンを探すのは正直、面倒くさい。

 

しかし、いざ切ってみると、気持ちいいものである。ヘアサロンの床に散乱した黒い針金みたいな髪の毛を眺めながら、えらく重たいものを背負っていたものだなぁ……と自分をねぎらいたくなった。ある種の再生である。

 

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相変わらず、鳥の観察に精を出している私と相方だが、最近ある発見をした。

 

アイルランドにはイチイの木がいっぱい生えているのだが、イチイの木の中には、小鳥がいっぱい生息している。イチイの木は教会や墓地でよくみられる木で、日本の神社にも奉られている。葉っぱは猛毒なのに、なぜか小鳥に愛されている。小鳥を包み込むような枝葉の生え方は、子供を抱く母親を思わせる。萎れた枝が地面をつくと、そこから新しい根が生えるそうで、長寿や再生の象徴でもあるのだとか。

 

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私は日本に住んでいた頃、ことあるごとに神社にお参りしていた。神社の静けさと、澄んだ空気がとても好きだった。アイルランドへきてから、当然のことながら神社へ行くことはなくなったものの、気が付けば、イチイの木の下で、小鳥たちを拝んでいる。あの独特な香りをしたイチイの木の下で大きく息を吸うと、神社でお参りした時のような神聖な気持ちになるのだ。

アイルランドで一番小さいと言われている小鳥キクイタダキもまた、このイチイの木の住人である。頭に小さな王冠のある小さな、小さな鳥。今までほとんど目にすることのなかったのだが、イチイの木を意識するようになってから、よく見かけるようになった。

 

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キクイタダキ

昔々、鳥たちの間で、誰が一番高く飛べるかを競う大会が開かれた。一番小さな鳥であるキクイタダキは鷲の羽の中に隠れ、ゴールの手前で、鷲の羽の中から飛び出した。その時に、あまりにも高く飛んだものだから、太陽に頭が当たり、頭に王冠がついたという伝説がある。

 

小さな鳥の王様なのだ。

 

考古学者が発掘現場を掘るごとに新たな発見があるように、鳥の世界も、新しい扉を開けば、まったく新しい世界が繰り広げられる。

 

イチイの木の発見といい、散髪といい、

ある意味、再生のときなのかもしれない。

そんな清々しい、11月のはじまりである。 それにしても、毎日のようにイチイの木の中に首を突っ込んで微動だにしない私たち夫婦は、怪しまれているに違いない。

 

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