maimaiomaiのブログ

アイルランドと日本の狭間で 言葉を解き、紡ぎなおす者として

あともう少し、がんばろう。

 

クリスマスにチョコレートケーキを作った。

 

溶かしたチョコレートを生クリームにいっきに混ぜすぎたのか、生クリームが固まって、顔に塗る泥パックのようになってしまった。

 

それでもあきらめずに、クリームの上に板チョコを細かく削ったものを上にふんだんに散らして、なんとかごまかした。ケーキにろうそくを立て、相方と二人で手をつないで、来年が良い年になるよう願いを込めながら二人でろうそくをフーっと吹くと、

 

削ったチョコレートが、部屋中に飛び散った。

 

私は、チョコまみれのセーターを着たまま、掃除機で黙々とチョコレートの細かい破片を吸い取る。

相方が焼いたチキンや用意された夕食を背景に「ブイーン、ブイーン」と鳴り響く掃除機の音がなんともむなしく感じられた。ちょっと残念な感じであったが、私たち夫婦がいつもこんな風なので、今年もこんな風に二人で不器用ながら二人三脚で頑張っていくのだなぁと、今後の未来を、ケーキと言う名の水晶で見せてもらったような気がした。

 

 

少し前はこんな理想との間にズレがあると、何日も自己嫌悪に陥ったものだが、年と共にその「何日も」が一日、二日、とどんどん減っていき、最近は数時間ほどにとどまっている。

 

精一杯頑張って、この結果なのだからしょうがない。明日また頑張ろう、と思うようにしている。

 

それが良いかどうかは分からないのだが、健康に良いことだけは間違いない。それに、間違いなく健康は大事だ。以前に比べ、自律神経が崩れることが、めっきり減った。

 

それにしても、長年自分が追いかけ続けたあの「完璧」と言う名の虚像は一体どこから連れてきたのだろうかと、いまさらながら不思議に思う。

 

 

 

今年の冬は長い。

 

最近、目の前の通りに駐車している車の窓が割られる事件が多発した。こんなことは、今まで無かったという。スーパーの前で物乞いする人も、去年よりも増えたように感じられる。

 

クリスマスが終わってから、サンタさんからもらったのであろう新品のスクーターや乗り物に乗る子供たちをよく道端で見かけるようになったが、子供が子供をナイフで脅し、乗り物を盗む事件も起きた。

 

乗り物を奪った子供を責める気にもなれない。もし、私が彼のような境遇にいたら、同じことをしていたかもしれない。

この国で時折垣間見る「階級差」。この国では、当たり前のように寄付をするならわしが多くの人を救っているように思うが、そんな余裕もなくなってきたとすれば、規制が解除されたとしても、きっと長い道のりになるだろう。

 

 

クリスマスの日、公園をお散歩していると、見知らぬ可愛いおばさまが「メリークリスマス」と声をかけてきた。しばらく、さらに公園を先へ進むと、近所の3人坊やたちがお父さんと、どこかで集めてきたのであろう薪の束を抱えて歩いてくる。今夜、暖炉で燃やすという。おばさまの「メリークリスマス」を受け渡すように、3人坊やたちに「メリークリスマス」と言った。

 

かつて、「がんばろう」という言葉を使ってはならないというような風潮があったように思うが、最近は、ひたすら周りに「頑張ろうね」と言っているような気がする。

 

あともう少し、あともう少し。頑張ろう。もう少しだから、頑張ろう。 

 

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