数か月前に、ある不思議な夢を見た。
言葉に表しようのない、美しい、まっすぐな直線を描くような音が聴こえてきて、自分の心がどうしようもなく「そっち」へ惹かれるのだった。
ただそれだけなのだが、単純に、自分がなぜ「表現」というものをやっているかというと、
どうしようもなく「そっち」へ向かう心が、魂があるからなのかもしれないな、と
夢から覚めてもまだ耳の中でその「音」が鳴りやまない早朝に、布団の中で漠然と理解した。
作品選びの時は、そういう決め方をしたいと思っている。
後付けで、理詰めで自分を説得するようでは、あとあと後悔するだけなのであり、
やはり作品というのは、心で決めたほうがいい。
翻訳であれ、なんの表現であれ、
その地道で正直な作業が積み重なって、「個性」が自ずと姿を表すのだと思う。
4月に上演させていただく「Necessary Targets(ボスニアに咲く花)」も、そんな作品の一つだった。
演技の恩師に教えてもらった次の日から、何も考えずに咄嗟に翻訳し始めたのが、ちょうど5-6年前のこと。頭が働く前に身体がおのずと動いてしまう——、そういう瞬間は、何よりの幸せなのかもしれない。
白とも黒とも言い切れない、作者の「揺れる」ような葛藤が手に取るように分かる。
茨木のり子さんの言う、「ふるえる弱いアンテナ」のように、ふるふると小刻みに揺れている。
私にとって色気とは、肌を敢えて露出するような浅はかなものではなく、
このような、人間の奥底から人知れずこぼれ出てしまうようなもの。
この作品を通して、あらゆる素敵な女性(女優さんたち)と出会わせていただいた。
それこそが、私にとって何よりの宝物である。
公演の4月は、さらに、この作品を通して多くの人達(女性に限らず)にお会いできることを願って――
Ova9 第1回公演 Necessary Targets ~ボスニアに咲く花~
原作 イヴ・エンスラー
「何千マイルも離れた場所に住む人々の苦しみに、共感できるだろうか」
(イントロダクションより抜粋)
内戦を生き抜いた女性たちを作家イヴ・エンスラーが自らインタビューし、
その証言を基に書き上げた、自国「アメリカ」を問う物語。
翻訳 石川麻衣 演出 若尾明子(松熊つる松/劇団青年座)
出演
辻 しのぶ(ecru)
渋谷 はるか(文学座)
小谷 佳加(劇団文化座)
山上 優(RiZO CORPORATION )
ひがし 由貴(劇団青年座)
上野 裕子(劇団1980)
磯部 莉菜子(エンパシィ)
美術 根来美咲(劇団青年座)
照明 中川隆一
音響 斎藤美佐男
舞台監督 大河原敦
衣装 アトリエOva
著作権 Lotus Productions, Inc.
企画・製作 Ova9
2019年4月24日(水)~30日(火)
荻窪・オメガ東京
24(水) 19:00
25(木) 14:00/19:00
26(金) 19:00 27(土) 14:00/19:00
28(日) 15:00
29(月祝) 15:00
30(火) 14:00 (受付1時間前開始 / 開場30分前)
全席自由 前売 4000円 当日4500円
予約・お問い合わせ ova9actress@gmail.com Quartet Online予約フォーム https://www.quartet-online.net/ticket/ova9?o=c00001e
リーディングの時の写真より
Photo by Yukiko Shimizu
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